問題
問題文
出典:独立行政法人大学入試センター 公開問題「平成30 年告示高等学校学習指導要領に対応した令和7年度大学入学共通テストからの出題教科・科目 情報サンプル問題」 https://www.mext.go.jp/content/20211014-mxt_daigakuc02-000018441_9.pdf |
次の文章は,2011年の東日本大震災の後にまとめられた報告書「大規模災害等緊急事態における通信確保の在り方について」の一部である。この報告書を基にした先生と生徒の会話文を読み,空欄(ア)~(エ)に入れるのに最も適当なものを,それぞれの解答群のうちから一つずつ選べ。ただし,空欄(ア)・(イ)の順序は問わない。
近年の通信インフラ・ネットワークの発展により,インターネットを利用した多彩なサービス・アプリケーション(ソーシャルメディアサービス,動画配信サービス,動画投稿サイト,クラウドサービス等)が登場しており,今回の震災においては,インターネットを利用した安否確認,情報共有等の新たな取組が見られた。 例えば,(a)震災直後の音声通話・メール等がつながりにくい状況において,ソーシャルメディアサービスについては,安否確認を行う手段の一つとして個人に利用されるとともに,登録者がリアルタイムに情報発信するものであることから,震災に関する情報発信・収集のための手段として,個人や公共機関等に利用され,その有効性が示された。 また,各自治体から発表されている避難者名簿等の情報を集約し検索可能とするサイト,(省略)ボランティアや支援物資の送り手と受け手のニーズを引き合わせるマッチングサイトなどインターネットを利用した付加価値のある各種サービスが提供された。 さらに,(b)被災した自治体等に対してホームページ・メールサービスの提供や避難所の運営支援ツールをクラウド上で提供することも行われ,業務運営の確保や情報の保全にクラウドサービスが活用された。 その他,放送事業者が動画配信サイトに震災関連ニュースを提供し,インターネット上で配信した事例や個人が動画中継サイト上で被災地の様子をリアルタイムで配信した事例も見られた。 このようなインターネットの効果的な利用の一方で,今回の震災では,インターネット上で震災に関する様々な情報が大量に流通したことによる情報の取捨選択の必要や(省略)(c)情報格差の発生などの課題も生じたところである。このため,インターネットの活用事例の収集・共有に当たっては,インターネット利用に関する課題についても併せて共有できるようにすることが望ましい。 |
会話文
先生:10年前の東日本大震災の時は,この報告書(下線(a))にあるように電話やメールがつながりにくくなったようです。特に固定電話がつながりにくかったようだね。
生徒:多分,利用者からの発信が急増するから回線がパンクしてしまったのではないですか。でもSNSは利用できたのですね。
先生:通常通りとはいかなかったと思うけど,利用できたようだね。当時の固定電話の回線交換方式と違って,データ通信であるインターネット回線では(ア)したり(イ)したりするから,SNSは災害に強いメディアとして認識されるようになったんだよ。
生徒:こういう時にメリットが生かされたのですね。じゃあ,大きな災害の時は,よく使うこのSNSアプリで連絡を取れば良いですね。
先生:様々な被害が考えられるから複数の異なるメディアで情報を伝達することを考えた方が良いと思うよ。
生徒:分かりました。また,この報告書(下線c)にあるような情報格差は(ウ)や経済的な格差によって生じますから,周りの人たちが互いに助け合うことが大事ですね。
先生:その通りだね。
生徒:先生,ここ(下線b)にあるクラウドサービスはこの頃から使われるようになったのですか。
先生:もう少し前からあったけど,この震災をきっかけに自治体での利用が広まったとも言われているよ。
生徒:それは(エ)からですか。
先生:それも理由の一つだね。加えて,運用コストも低く抑えることもできるし,インターネット回線があればサービスをどこでも利用できるからね。
(ア)、(イ)の回答群 |
(0)通信経路上の機器を通信に必要な分だけ使えるように予約してパケットを送出 (1)大量の回線を用意して大きなデータを一つにまとめたパケットを一度に送出 (2)データを送るためのパケットが途中で欠落しても再送 (3)回線を占有しないで送信元や宛先の異なるパケットを混在させて送出 (4)一つの回線を占有して安定して相手との通信を確立 |
(ウ)の回答群 |
(0)機密性の違い (1)信憑性の違い (2)季節の違い (3)世代の違い |
(エ)の回答群 |
(0)手元にデータをおいておけるため高い安心感を得られる (1)手元にある機材を追加して自由に拡張することができる (2)サーバを接続するプロバイダを自由に選ぶことができる (3)サーバなどの機器を自ら設置する必要がない |
解答
- (ア)、(イ)の解答 (順不同)
(2)データを送るためのパケットが途中で欠落しても再送
(3)回線を占有しないで送信元や宛先の異なるパケットを混在させて送出 - (ウ)の解答
(3)世代の違い - (エ)の解答
(3)サーバなどの機器を自ら設置する必要がない
解説
今日の授業では、災害時の情報通信とクラウドサービス、そして情報格差について学びます。東日本大震災を例に、これらの技術がどのように使われ、どのような課題が生じたのかを深く掘り下げていきましょう。
黒板
パケット通信と回線交換方式の違い (ア)、(イ)の解答
「回線交換方式と違って、データ通信であるインターネット回線では(ア)したり(イ)したりする」 (0)通信経路上の機器を通信に必要な分だけ使えるように予約してパケットを送出 (1)大量の回線を用意して大きなデータを一つにまとめたパケットを一度に送出 (2)データを送るためのパケットが途中で欠落しても再送 (3)回線を占有しないで送信元や宛先の異なるパケットを混在させて送出 (4)一つの回線を占有して安定して相手との通信を確立 |
災害時にSNSが使われた理由を説明する前に、通信の仕組みについて少し話してみよう。
はい、先生。お願いします。
まず、通信には「回線交換方式」と「パケット交換方式」があるんだ。回線交換方式って、聞いたことあるかな?
交換局で、交換手がケーブルを差し替えている昔の写真を見たことがあるけれど、あれのこと?
その通り。昔は実際に人がケーブルを切り替えていたけれど、その後電子交換機、デジタル交換機というように進化しているよ。
へぇー、どんな特徴があるの?
利用者間が「1対1」で通信するもので、通話中はその回線を占有している、つまり他の人が使うことはできないんだ。だから、安定して通信できるけど、回線が混み合いやすいという点がデメリットだよ。
なるほど。じゃあ、パケット交換方式では、回線を複数の人が使うことができるの?
その通り。パケット交換方式では、データを小さなパケットに分けて送る仕組みで、回線を占有せず、複数のデータを同時にやり取りできるんだ。
なるほど。回線を細かく分けて、効率的に通信できるようにするんですね。
その通り。それに、パケットが途中で欠落しても再送できるから、災害時にも強いんだ。インターネットの通信ではパケット交換方式が使われているよ。
SNSが災害時に役立つ理由もこれと関係があるんですね。
そうだよ。これを踏まえて、(ア)と(イ)の答えを考えてみようか。
(ア)は『データを送るためのパケットが途中で欠落しても再送』、(イ)は『回線を占有しないで送信元や宛先の異なるパケットを混在させて送出』じゃないですか?
その通り!これはインターネット、つまりパケット交換の特徴を質問しているよね。じゃあ、他の選択肢がどうして違うのかも考えてみようか。
はい、お願いします。
例えば(0)の『通信経路上の機器を通信に必要な分だけ使えるように予約してパケットを送出』というのはどうして当てはまらないんだろう。
これは、パケットというところは合ってそうだけど、「必要な分だけ使えるように予約」というのはちょっと違和感があります。
そうだね。パケット通信は、予約しなくても複数のデータが同時に流れる仕組みだから、これは当てはまらないね。
(1)「大量の回線を用意して大きなデータを一つにまとめたパケットを一度に送出」も変ですよね。パケット通信では、小さく分けて送るのが特徴だから、当てはまらない。
その通り。さえているね。
それじゃ、(4)の『一つの回線を占有して安定して相手との通信を確立』は、回線交換方式の説明ってことですね。
その通り。紛らわしい選択肢が含まれる場合があるから、よく読んで答えるようにしようね。
情報格差とデジタルディバイド (ウ)の解答
「この報告書にあるような情報格差は(ウ)や経済的な格差によって生じます」 (0)機密性の違い (1)信憑性の違い (2)季節の違い (3)世代の違い |
次に情報格差について考えてみよう。
はい、先生。情報格差って、具体的にどういうことですか?
情報格差、英語で言うとデジタルディバイドだけれども、これは、IT技術を使いこなせる人とそうでない人の間に生じる差のことだよ。特に、世代によってこの差が大きくなるんだ。
うちのおばあちゃんも、スマホの使い方が難しいって言っているけど、昔はなかったんだから仕方がないよね。
そうだね。仕方がないって言って使えないままにしていると、災害時に避難に必要な情報にアクセスできないといった問題が起きるんだ。
なるほど。これはなんとしかしないといけませんね。
その通り、だから情報格差の解消は大きな社会問題なんだ。じゃあ、(ウ)にはどの選択肢が適切だと思う?
『世代の違い』が一番合っていると思います。
その通り!他の選択肢、例えば『機密性の違い』や『信憑性の違い』は、情報そのものに関する問題で、情報にアクセスできるかどうかの問題ではないから、これは適切じゃないんだ。
なるほど。何かそれっぽい用語が選択肢に含まれているので、選んでしまいそうだけれども、よく問題を読めば正解を得られますね。
クラウドサービスの利点と課題 (エ)の解答
「生徒:先生、ここにあるクラウドサービスはこの頃から使われるようになったのですか。 先生: もう少し前からあったけど、この震災をきっかけに自治体での利用が広まったとも言われているよ。 生徒:それは(エ)からですか。」 (0)手元にデータをおいておけるため高い安心感を得られる (1)手元にある機材を追加して自由に拡張することができる (2)サーバを接続するプロバイダを自由に選ぶことができる (3)サーバなどの機器を自ら設置する必要がない |
クラウドサービスという言葉は聞いたことがあるかな?
なんかCMなんかで聞いたような気がするけれど、何のことかわかりません。クラウドは「雲」のことだよね?
インターネットを雲に見立てて、インターネットを通じてコンピュータネットワークを構築したものを「クラウドコンピューティング」と呼ぶんだ。そして、ここで提供されるサービスが「クラウドサービス」だよ。
うーん。どこが普通のコンピュータと違うんですか?具体的に教えてください。
なおや君は、Google ドライブって使ったことある?
はい、学校で使ったことがあります。Googleドライブは、インターネット上にデータを保存できるサービスですよね。
じゃあ、これがどういう仕組みで動いているか考えてみよう。もし学校が自分でサーバを持っていたとしたら、みんなが作成するドキュメントやスプレッドシートのデータを保管するために、大きなサーバを購入して設置しなきゃいけないんだ。
それって、すごくお金がかかりそうですね。
その通り。そして、サーバの設置だけじゃなくて、定期的にメンテナンスをして、必要なときには容量を増やすことも考えなきゃいけない。でも、Googleドライブを使えば、そうしたサーバの管理は全部Googleがやってくれるんだ。
なるほど、それは便利ですね。
そうだね。さらに、Googleドライブならインターネットに接続できる場所ならどこでもアクセスできるし、データが自動的にGoogleのサーバに保存されるから、たとえ自分のパソコンが壊れてもデータが失われる心配がないんだ。
なるほど、Googleが責任をもってデータを保存してくれているんですね。
その通り。それに、データがインターネット上に保存されているから、クラスメートや先生とリアルタイムで共同作業もできる。これも、自分たちでサーバを管理していると簡単にはできないことなんだ。
なるほど。それじゃあ、(エ)の答えは(3)『サーバなどの機器を自ら設置する必要がない』が正解ですね。
その通り。(0)『手元にデータをおいて』や(1)『手元にある機材を追加して』は、クラウドとは逆の考え方だから適切じゃないね。
そうですね。(2)『サーバを接続するプロバイダを自由に選ぶことができる』も悩んだんですが、これはどういう意味ですか?
「プロバイダ」とはインターネットに接続する業者のことだよ。これを「自由に選ぶことができる」ことと「クラウドサービスの利用が広まった」こととは関係がないので、問題に対する答えとしては適切ではないね。
さいごに
今日の授業では、災害時の情報通信の仕組みと、クラウドサービスの利点、そして情報格差について学んだね。これらをしっかり理解して、災害時にどう対策を取るべきか考えておくことが大切だよ。
ありがとう先生、おかげでよく理解できました。また質問があれば聞きますね。
もちろん、いつでも質問してね。
まとめ
問題
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編集者ひとこと
今回から、大学入試センター 公開の「情報1サンプル問題」の解説を始めます。「情報寺子屋」では、どの参考書よりもわかりやすく解説しますので、皆さん期待してください。
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